しかし、なぜ最近、天然ガスの生産コストが上昇しているのか?

「自然にガスが湧き出すガス井戸もありますが、多くの井戸は生産した天然ガスの一部を地下に圧縮して戻す方式で天然ガスが溶け込んだ水をくみ上げます。ガスを圧縮するための機械、コンプレッサーを動かすには電力が必要ですが、その電気代が高騰しているほか、輸送コストや資機材価格も上がり、生産コストが上昇しています」(千代さん)

 関東天然瓦斯開発は生産井(せいさんせい)を約380本所有しているが、地下に天然ガスを圧縮して送り込むにはかなりの電力を必要とする。さらにパイプラインでガスを送ったり、ガスの熱量を調整したりする際にも電力を消費する。

 つまり、関東天然瓦斯開発は多くの企業と同様に電気料金の値上げというかたちで間接的に資源価格の高騰や円安の影響を多大に受けている。大多喜ガスが家庭用ガス料金を大幅に値上げせずに済んでいるのは、関東天然瓦斯開発の企業努力によるところが大きい。

「千葉県には弊社を含めて、天然ガスの採掘を行っている会社が7社あります。弊社だけでなく、各社とも相当がんばっていますが、限界にきているのが実情と思われます」(同)

800年分の生産量だが…

 関東天然瓦斯開発が所有するガス井戸の多くは九十九里浜に面した外房地区に位置しているが、千葉市の都市部にも天然ガスの生産設備がある。

 南関東ガス田は1都4県にまたがる地域に広がっており、かつては東京都の江東区や江戸川区にも延べ約40本のガス井戸が掘られ、東京ガスに天然ガスを供給していた。

 南関東ガス田における採掘可能な天然ガス埋蔵量は3,685億立方メートルと推定され、これは現在の生産量の800年分にもあたる。天然資源の少ない日本にとって貴重な天然ガス資源であるのは間違いない。

 であれば、もっと多くの井戸を掘って、天然ガスの供給を増やすことはできないのだろうか?

「われわれは地下から水をくみ上げることでそこに含まれた天然ガスやヨウ素を採取しています。はっきりとした因果関係は証明されていませんが、それが地盤沈下の原因の一つであるといわれています」(同)

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東京にも届く「国産ガス」