「当社のパイプライン網は東京都や富山県、さらには長野県を経由して静岡県まで延びています。その間にある都市ガス事業者様にガスを卸しています。さらに工場や発電所にも送っています」

 と、同社国内エネルギー事業本部エネルギー営業ユニット業務・計画グループの高橋洋行マネジャーは説明する。

 ちなみに、ガスの卸売価格は「LNGの輸入価格を参照して販売価格を決めています。価格の変更につきましては、経済産業省、お客様との合意を得たうえでのことです」と高橋さんは説明する。

商業化への高いハードル

 最近、南長岡ガス田の天然ガスの産出はピークを過ぎ、減少傾向にある。そのため、INPEXは越路原プラントの北約4.5キロの地点で昨年12月から試掘調査を行っている。

「井戸を掘って、そこに特殊なツールを下ろして測定すると、地層にどのくらい油やガスが入っているか、性状がわかります」(前出の永瀬さん)

 ちなみに、「井戸を1本掘削する費用は数十億円レベル。海洋ガス田の開発はそれよりもはるかにコストがかかります」と永瀬さんは付け加える。

 昨年、INPEXとJOGMEC(現エネルギー・金属鉱物資源機構)は島根、山口両県沖約150キロの地点で試掘調査を行ったが、永瀬さんによれば「当初、想定していたよりもかなり資源量が少なかった」。そのため、商業化を断念した。

 天然ガスを採取するには莫大な開発費がかかるうえ、最近、資機材価格が値上がりしている。当然のことながら、それらはガスの卸売価格にも反映される。残念ながら、「資源価格の高騰や円安の影響を受けない、家計にやさしい国産ガス」は幻想だった。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)