地盤沈下を防止するため、東京都では天然ガスの採取は1972年から全面的に停止された。

 千葉県も73年に「地盤沈下の防止に関する協定」を、関東天然瓦斯開発を含む10社と締結。天然ガス採取にともなう水の排出を制限してきた。そのため、千葉県における天然ガスの生産量は70年代後半以降、横ばいとなっている。

「近年、地盤沈下は沈静化の傾向にありますが、弊社を含めまして同業他社のみなさんも協定を順守して、環境に配慮しながら天然ガスを生産しています」(同)

東京にも届く国産ガス

 地層水とともに採取する「水溶性ガス」からなる南関東ガス田に対して、主に新潟県で採取される天然ガスは地層に封じ込められたもので、「構造性ガス」と呼ばれる。

 なかでも「南長岡ガス田」における生産量は全国一で、国産天然ガスの約5割を占める。

「南関東ガス田はかなり広いエリアで、比較的深度の浅い場所からとれる圧力の低い天然ガスです。それとは対照的に、南長岡ガス田は長さ6キロ、幅3キロほどの範囲で、深さ4000から5000メートルと、かなりの大深度です。上からの強い力で押された天然ガスがかなり圧縮された状態で岩のすき間にたまっています」

 INPEX(旧国際石油開発帝石)国内E&P事業本部探鉱・開発ユニットの永瀬圭司ジェネラルマネジャーは説明する。

 INPEXは日本最大の石油・天然ガス開発企業で、国内だけでなく、世界各地でエネルギー開発を行っている。

 国際石油開発帝石の前身である帝国石油が南長岡ガス田を発見したのは79年。81年から生産井の掘削や天然ガスの生産処理施設の建設を開始した。

 そのうち最大の生産処理施設、越路原(こしじはら)プラントは長岡市街から南西へ約10キロのところにある。ここで精製・処理されたガスは北陸ガス、上越市ガス水道局、妙高グリーンエナジーなど、新潟県内の都市ガス事業者だけでなく、県外にもパイプラインによって送られている。

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残念ながら「幻想」だった…