トルコ・シリア大地震の死者数が4万人を超えた。地震発生から10日以上が過ぎた今も行方不明者の捜索が続いている。トルコには隣国シリアからの難民が多く暮らしているが、被災地の一部ではトルコ人とシリア人との対立が深まっている。ドキュメンタリーフォトグラファーの小松由佳さんは10年ほど前からトルコ南部で取材してきた。さらに、この地域にはシリア出身の小松さんの夫の親族が大勢暮らしている。震災直後から現地と連絡をとり続けてきた小松さんに聞いた。
【動画】「ユカ」と呼びかけて被災したアンタキヤの街を撮影する小松由佳さんの友人
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今回の地震でもっとも被害の大きい都市の一つがトルコ南部、ハタイ県の県都アンタキヤだ。この街は今回の地震で大きくズレ動いた東アナトリア断層のほぼ真上に位置する。
「高層ビルの多いアンタキヤにはまだ大勢の行方不明者がいます。私の夫のいとこの家族も就寝中に生き埋めになってしまい、まだ見つかっていません」
小松さんのコーディネーターを務めてきたアブドュルラフマンさんの友人の家族もアンタキヤのマンションで暮らしていた。しかし、建物が倒壊し、家族全員ががれきの下敷きになった。
アブドュルラフマンさんは救援隊に重機を使った捜索を依頼した。ところが、捜索を後回しにされてしまった。被災者がシリア人だったからだ。
「捜索はトルコ人が優先で、埋もれているのがシリア人だとわかると後回しされました。それに抗議すると、トルコ人の集団とけんかになり、鼻の骨を折られたそうです」
重症でも入院できない
2011年にシリアで民主化運動が始まり、やがて内戦が勃発すると、トルコは同じイスラムの友人として多くのシリア難民を受け入れてきた。トルコに移り住んだシリア人は約350万人。その多くが、今回の地震で大きな被害を受けた地域に暮らしている。
当初、「客人」としてシリア人を受け入れてきたトルコ政府だったが、最近、彼らを「負担」と感じるトルコ人が増えてきた。そこに、今回の地震である。
同じ被災者にもかかわらず、「トルコ人とシリア人では、支援に差が出ていると聞いています」と、小松さんは指摘する。