被災現場から救助されたトルコ人は重症のけがを負っていれば、ヘリコプターなどで搬送されるが、シリア人は大けがでも入院が許されず、重症化したり亡くなったりするケースも出ているという。
「私が聞いた話では、複数の骨折をしたシリア人が病院に搬送されましたが、トルコ人しか入院が認められず、家に帰されてしまいました。家には暖房のための薪がなく、寒さのなか、容態が悪化して亡くなったそうです」
暖房用の薪は2倍に値上がり
今、現地でもっとも不足しているは暖房用の燃料だという。もともとこの地域では冬になると薪や炭を燃料にしたストーブで暖をとってきたが、シリア人はこれらの燃料の入手が困難になっている。
「アンタキヤと、シリア国境に接するレイハンルに住む親族や知人によると、トルコ人には薪や炭が配給されていますが、シリア人に対しては行われていません。なので、自分たちで買うしかないそうです」
地震前、炭は1キロ5トルコリラ(約40円)だったが、2倍近い9トルコリラに値上がりした。薪は1キロ3リラ(約24円)から、2倍の6リラに値上がりしている。しかも、1回20キロほどしか売ってもらえないという。
「崩壊を免れた家の多くも基礎部分や壁、屋根に亀裂が入って、住むことができない。被災地に避難所が設けられ、暖かいご飯も提供されていますが、利用できるのはトルコ人のみで、シリア人は利用できないそうです」
シリア人は集団埋葬
小松さんは続けた。
「支援が不公平であることについては、ある意味、仕方がないという思いもあるようです。しかし、亡くなった人に対する扱いが平等でないことに対してはかなり憤りを覚えている。暴動になりかけた、という話も聞きました。遺体の問題はとてもセンシティブです」
墓地の一角には大きな穴が掘られ、身元が確認された遺体であっても、それがシリア人の場合は集団埋葬することが強要されているという。
「イスラム教徒は教えに沿った方法で遺体の埋葬することをとても大切にします。基本的に亡くなってから24時間以内に土葬にしなければならない。もちろん、遺体1体につき、一つのお墓と定められています。トルコ人の場合は、それを守ることが認められていますが、墓地に大きな穴が掘られ、シリア人の遺体はみんなそこに入れられてしまう。死者の尊厳を侵す行為だと、反発する声がかなり上がっている。集団埋葬を拒んで、遺体をシリアに運んで埋葬するという話も結構聞いています」