「今こそ、『命の経済』へ舵を切るとき」よりエマニュエル・トッドほか著『2035年の世界地図』※Amazonで本の詳細を見る
「今こそ、『命の経済』へ舵を切るとき」より
エマニュエル・トッドほか著『2035年の世界地図』
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 だから、「20世紀は民主主義の世紀」と言った方がいい。権威主義体制の世紀ではありません。スターリンがいて、ヒトラー、ムッソリーニや、日本の軍部がいたとしても、です。

 21世紀も同じことです。私は民主主義の世紀になる、と思います。ロシアの危機やイランのような要素があったとしても、最後には彼らは負けるでしょう。そして、民主主義が勝利するのです。

■伝統と文明を共存させた日本が、真の勝者となるための3つの条件

――私は最近、冷戦の終わりごろに出版された、あなたの非常に重要な本である『ミレニアム』(未邦訳)の中で、あなたは冷戦後、日本の重要性が増すことを予言しています。ただし、非常に重要な但し書きが付いています。湾岸戦争での日本の受け身な行動に照らして、あなたはこのように述べていました。「資本主義の歴史の中で初めて、中心となりうる国家が、代償を払って帝国の責務を引き受けるのをためらっている」と。ポスト冷戦期における日本経済の低迷を振り返って、日本の失敗と成功があるとすれば、その理由は何だと思われますか。

 日本は大変な成功を収めました。驚くべき文明で伝統を守りつつも、驚くほど近代化することに成功しました。その成功には様々な側面があり、それゆえ日本は素晴らしい成功を収めたのです。

 しかし、約30年前にこの本で述べたように、リーダーであることを選ぶのであれば、その代償は軍事大国になることです。そして、日本は理解できる多くの理由から、今のところ軍事大国にはならないことを選んでいます。軍事大国でなければ、経済のリーダーにはなれません。また人口を増やすことができなければ、女性政策や移民政策にも影響します。

――世界は、経済的にも政治的にも二極化した方向に進んでいる、という見方もありうると思います。一方に米国とEUおよび日本を含むアジアの同盟国があり、もう一方にロシアや中国がある。このような二極化した新しい世界環境から最も大きな利益を得ることができるのは、どのような国や地域なのでしょうか。

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2035年の「真の勝者」はいったい誰か?