会見などで巧みに場面を切り取り、具体的に語った美智子さま。私はそれを「ディテール力」と名付けたが、紀宮さまにもそれがある。ただし立場の違いからだろうか、場面より気持ち、特に両親から学んだことへの理解を語ることが多かった。

 02年、33歳のお誕生日に語った「内親王という立場」についてなどその典型だ。そして示唆に富んでいる。

 紀宮さまはまず、「皇族という立場において、男女の差やその役割の違いというものは特別にはないと感じています」と述べている。「その務めについても、両陛下をお助けしながら、皇族としての務めを果たすという基本的な点で変わりなく、(略)男女の役割の違いというよりは、その公務の内容に対する各人の携わり方などが関係してくる場合もあるのではないかと思います」

 続けて「皇后様」という表現で、美智子さまの話をする。皇后さまはずっと「皇位継承者というお立場だけは他の者が代わることのできない、またそのお務め自体も他が分け持つことのできないもの」という考えだった、と。そこから「皇族女子」の話になる。

「内親王という立場も、他の皇族と変わるところはないでしょう。私の場合、宮中の行事など以外では、独りのお務めが多いため、これまであまり女性皇族ということを意識することも少なかったように思います。ただ、内親王という立場は、先行きを考えるとき、将来的にその立場を離れる可能性がどうしても念頭にあるため、中途半端に投げ出してしまうことのないように、継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきたということはあるかもしれません」

 胸に響く文章だった。ここまで紹介した文章からも、真面目で思慮深い女性だということがわかる。そして、いかに誠実に仕事をしてきたかが伝わってくる。本の最後には、「紀宮さま 地方における主なご公務」という一覧表が載っていて、平成になった89年から結婚する05年まで、訪れたのは延べ68府県。外国訪問も一覧表になっていて、そちらは延べ25カ国。

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