米アカデミー賞「作品賞」を受賞した映画「パラサイト」は言葉の壁をキャストの表現力で補い、ヒット作品の概念を変えた。だが、変化は映画だけではない。AERA2020年3月16日号では「メガヒットの条件」を特集。ここでは世界で会員数1億6千万人超のネットフリックスがもたらした人気コンテンツのつくり方に迫る。
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外国語映画として初めて「パラサイト」が米アカデミー賞作品賞を受賞したニュースには、日本の関係者も大いに沸いた。
「世界全体からアジアはこれまで以上に注目されています。私たちにとって良い歴史的転換のフェーズに入っています」
動画配信サービス最大手のネットフリックスで、コンテンツ・アクイジション部門ディレクターを務める坂本和隆さん(37)は、そう歓迎する。
それまで日本での会員数を公表していなかった同社が「300万人を超えた」と公表したのは2019年9月。『ネットフリックスの時代』の著書があるITジャーナリストの西田宗千佳さん(48)はこう言う。
「加入者数300万人という数字は、スカパー!やWOWOWの加入者数と同規模です。ネットフリックスはアメリカ国内では頭打ちになっていますが、インドなどアメリカ国外の市場が会員数の伸びを牽引して業績は好調です」
世界に大きな影響力を与える企業を意味する「FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)」の一つであるネットフリックス。その会員数は、世界で1億6千万人を超える。そのなかで日本の300万人という会員数は、微々たるものだ。しかし日本にはその数字以上の存在感がある。
コンテンツの「供給元」としての強みだ。
■ジャニーズもジブリも
昨年12月31日から嵐のドキュメンタリーシリーズ「ARASHI’s Diary‐Voyage‐」の28言語190カ国での独占配信をスタート。立て続けに20年1月にはスタジオジブリの21作品の配信権(日本と北米を除く)獲得や「ONE PIECE」のアメリカでの実写版ドラマシリーズの制作・全世界独占配信を発表した。
ジャニーズ、ジブリ、ジャンプ──。ネットフリックスが目をつけたのは、日本における3大メガヒットコンテンツホルダーだった。その動向について、映像メディア総合研究所の四方田(よもだ)浩一代表(55)は、こう分析する。