この変化は決して、昔と比べて地域のつながりが減ったからとか、治安が悪くなったからとか、子どもに手をかけるようになったからという外的要因だけが理由ではないと思います。子どもの放置という行為にそもそも問題があり、「昔は普通だったけど、よく考えたらまずくない?」と多くの人が気づき始めたからでしょう。差別問題と同じで、被差別者・マイノリティ(この場合は子ども)の権利に配慮されることが増えたからです。

「アメリカでは12歳以下の子どもにひとりで留守番させてはいけない!」というと、「そりゃアメリカの治安が悪いからでしょう」「アメリカは銃社会だから」「日本は子どもがひとりで留守番できる安全な国だ」といった声が返ってくるのですが、これは治安の問題ではありません。子どもの人権の問題です。家には包丁やガスコンロなど危険なものがたくさん置いてあるし、突然近所で火災が発生したり地震が起きたりしないとも言い切れない。そんな状況に、まだ自分で適切な判断を下すことができない子どもを放置するのは虐待(ネグレクト)である。それが、アメリカで子どもの留守番が禁じられている理由です。

 そんなこと言われても困る、というかたもいるでしょう。突然の一斉休校、仕事は休めないし、リモートワークもできない。近くに家族もいないし、子どもひとりで留守番させるしかないじゃないか。こんな記事きれい事だ、と不快に思うかたもいるかもしれません。でも、小学生くらいの幼い子をひとりにさせておくのは子どもの人権に反した行為であるということが、日本ではもっと知られてもいいんじゃないかとも思うのです。

※1 出典:ベネッセ教育情報サイト調査「子どもだけのお留守番事情」(対象:年少~小学生の子どもを持つ保護者1406名、2013年)
※2 イリノイ州の「14歳以下」という基準は1987年に制定されたもので、さすがに厳しすぎるということで「12歳以下」に引き下げられることが2019年に決まりました
※3 出典:U.S. Department of Health and Human Services/Leaving Your Child Home Alone(筆者拙訳)

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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