・Bちゃん(8カ月)


 慣らし保育初日から、機嫌よく遊んでいるBちゃん。よく遊んでよく食べてよく寝る。「本当にこの子、はじめましてかしら?」と思うくらいご機嫌でした。ですので「慣らし保育はもういらないと思います。明日から1日保育しましょうか?」と3日目で慣らし保育が終了しました。すると、1週間保育園に通った週末に発熱。次の週は1週間保育園を休むことになってしまいました。私の後悔は「機嫌がいいからと言って、負担がないわけではない」ということがわからなかったということです。

・Cちゃん(2歳)
 お母さんが下の子を出産する前に3カ月程入園したCちゃん。お母さんと離れることがとてもつらく、食事を完全にボイコットしました。午前中だけの慣らし期間を1カ月取りましたが、それでも食事はほとんど食べてくれません。お母さんとしてはもっと長く預けたい気持ちがあり、Cちゃんも遊ぶときはご機嫌で好きな先生もできたので保育時間を延ばしたところで発熱。1週間近く熱で保育園を休みました。その後、お母さんと相談し、残りの2カ月はお昼ご飯が終わったらお迎えに来てもらうことにしました。そこからは、Cちゃんもお母さんも吹っ切れて、ご飯はあまり食べないものの機嫌よく保育園生活を過ごしました。

●慣らし保育期間に親ができること

 慣らし保育期間は、赤ちゃんにとってはもちろんのこと、職場復帰直後のお母さんにとっても不安な期間です。これまで一日中一緒に過ごしてきた赤ちゃんと離れることは、何とも言い難く、心にぽっかりと穴が開いたような気持になるかもしれません。お母さんのそんな気持ちも、慣らし保育から徐々に慣らして「保育園に任せよう!」という気持ちになればと思います。

 赤ちゃんのことが心配だからこそ、この時期にお母さんやお父さんにしてほしいことは「これまで以上に笑顔とスキンシップを心がける」ということ。保育園に送るときは不安な顔はせずにっこり笑って「いってきます!」。お迎えの時も、にっこり笑って「ただいま!」と抱きしめましょう。帰宅後に赤ちゃんを抱っこするのはもちろんのこと「今日は保育園でたくさん頑張ったね!」といっぱい褒めてあげましょう。いつも以上に甘える子もいるでしょうし、うまく慣らし保育が進まずモヤモヤすることもあるでしょう。だからこそ、慣らし保育期間は「赤ちゃんの気持ちを受け止めよう!」と温かく見守ってほしいなと思います。

 20年以上保育する中で、私も親御さんの気持ちに寄り添い「できるだけ早い段階で、長い時間の保育をしてあげたい」という気持ちになったことがあります。ですが経験上、「無理をすると、体調を崩すことがある」ことがわかりました。統計を見てみても、慣らし保育期間は、新しい環境に適応することが難しくケガや事故が多くなる時期でもあります。

 起きている時間の大半を過ごす保育園にスムーズに慣れ、お互い知らない者同士の赤ちゃんと保育士が、少しずつ信頼関係を築いていくためにも、慣らし保育は大切な時間なのです。(文/中田馨)

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中田馨

中田馨

なかた・かおり/1978年生まれ。兵庫県の認可保育園、中田家庭保育所施設長。一般社団法人離乳食インストラクター協会代表理事。保育士目線の離乳食講座受講生は4年で2000人。自身も中3男子、小5女子の子育て中。

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