舞台をやっていると、稽古を積み重ねて、毎日、同じことをしているはずなのに、突然、新しい感情が芽生えることがあるんです。その感情が歌やお芝居に上乗せされると100%を超えた状態になる。アドレナリンが出てくるというか、ランナーズハイみたいな感覚になるんです。お客さんには伝わっていないかもしれませんが、自分がこれほど満足できる瞬間があるというのはすごく幸せなことだと思う。舞台の魅力ですね。
――ジョセフには「夢を読み解く」力があり、それを活用して人生を切り開いていく。薮さんが持つ“特殊な能力”を尋ねたら、意外な答えが返ってきた。
自分に感情移入し過ぎないでいられることですかね。常に自分のことを客観的に見られるのは特技かなと思います。専門用語でいうと「メタ認知」というのかな?「あ~、俺ストレスたまってるなぁ、と感じている自分」を、俯瞰で見ることによって、自分のストレスじゃないように感じられるし、深みにはまらないで済む。悩みとかどうでもよくなるんで、ここ数年はそうするようにしてますね。Hey!Say!JUMPのライブ中もそうなんですよ。テンションが上がりすぎて周りが見えなくなっちゃうと危ないので、テンションを上げてるふうに見せつつ、意外と冷静に物事を考えるようにしてます(笑)。
――コンサートでは演出のアイデアを出すこともある。故・ジャニー喜多川さんはじめ、ジャニーズ事務所の先輩から受けた影響は大きい。
ジャニーズ事務所のタレントのなかでも、Hey!Say!JUMPは比較的ジャニーさんの近くで学ばせていただく機会が多かった気がします。滝沢(秀明)くんをはじめ、“舞台の伝道師”のような方々がたくさん身近にいるので、舞台を好きになって、演出について考えるようになるのは自然なこと。ジャニーさんはいなくなったけど、その教えを先輩・後輩の垣根を越えて持ち寄ってやっていく機会は、今後、増えていくんじゃないかな。今回のミュージカルも、自分の中の素晴らしい糧になると思います。
――Hey!Say!JUMPのメンバーのなかでは最年長。今年、30歳になった。
グループでいるときは「しっかり者」という感じでやってますけど、普段の僕は全然しっかりしてないです。床暖房つけっぱなしで寝ちゃったりしますし。そろそろ人間として基本的なことをしっかりしなきゃと思い続けてます。
30歳になった実感はないですね。デビューしたての時は「30歳になったら」と思い描いたものがあった気がしますけど……。具体的にどんなことを考えていたのかは、もう覚えてないです。目の前のことに精一杯だったのかもしれない。でも、同じメンバーで続けていきたい、良い関係性を保っていきたい。どうやってお客さんを喜ばせるか、みんなと一緒に考えていきたい。それはこの先も、ずっと変わらないと思います。
(ライター・大道絵里子)
※AERA 2020年3月2日号