■業種の壁を越えて 50代女性の場合

 業種自体を変えてしまうことも、実はそれほど難しくない。

 50代の女性は、7年前に検査業務の会社に転職した。

 元は英語教師だ。複数の公立、私立の中学高校でがむしゃらに働いてきたが、40歳を過ぎ、過労で体調維持に不安を覚えるようになった。

「仕事に対するポジティブな気持ちがなくなり、生きるって仕事だけじゃないと思うようになりました」

 50歳を過ぎて未経験の異業種に転職するのは不安もあったが、飛び込んでみると、意外に肌に合った。

 数人の社員が働く小さな会社。主な業務は英語でのパソコン入力とメールのやりとり。残業も出張もないため手当ての上乗せはないが、自分のペースを維持し、平穏な心持ちで働ける。女性は最近、内面に変化がおきたと感じている。

「若い頃は周囲の同級生たちと比べて自分はどうか、ということを気にしていました。でも今は、年収やポジションと関係なく、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いという自分の価値観で人を見たり、人とつきあったりできるようになりました」

(文/編集部 渡辺豪)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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