新型コロナウイルスの感染による肺炎拡大を受けて、WHOは「緊急事態」を宣言した。感染が広がった背景には、「軽症」者が多いことが関係していると見られる。AERA2020年2月10日号は、新型ウイルスの現状と対策を専門家に聞いた。
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なぜ、感染者数が増え続けているのか。同じコロナウイルスが原因で、2002~03年に中国などで流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)との比較で専門家の多くが指摘するのが、今回の患者はSARSと比べて「軽症」が多いことだ。
患者のほとんどが重症なら、その人を一般集団から隔離すれば、それ以上の広がりを防げる。実際、比較的重症者が多かったSARSの際は、こうした対策に取り組み、ウイルスの広がりを封じ込めることができた。
一方、今回は軽症の人たちがたくさんいる。これらの人が、ごくふつうの風邪だと思い込むなどして新型のウイルスだと気付かず、ほかの人に感染を広げている可能性があるという。
30日には、発熱や肺炎などの症状がなく中国から帰国した人からウイルスが見つかった。一般的には、症状の重い人のほうがウイルスをたくさん体内に抱えていて、他人にもうつしやすいとされることが多い。しかし、SARSの流行時にWHOで封じ込めにあたった押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は、「今回は、無症状の人でも感染力を持っているのではないか」とみる。
感染しても症状のない人は「不顕性感染」ともよばれ、インフルエンザなどの患者でも少なくないとされる。症状のない人が本人も周囲も気付かないまま感染を広げていくとすると、ウイルスの広がりを抑えこむのは難しくなる。いまは厚労省を中心に、症状を起こした中国からの帰国者らを対象にウイルスの封じ込めをめざしているが、無症状の人が感染力を持っているなら、だれがいつ、どこで感染してもおかしくない状態になる可能性もある。
今回のウイルスは、コウモリを起源に、何らかの別の動物を介するなどして伝わったと推定されている。動物から伝わったばかりのウイルスに対して、人間は免疫を持っていない。その点でも、このウイルスに対して私たちの防御力は弱い。