特に就職してからは終わりなき試練の連続。毎日が入試と言っても過言ではない。しかも入試と違って客観的で公正な判断基準などどこにもない。そして中年にさしかかった頃、ようやくこの試練には終わりなどないのだと気づく。さすがにこれだけが人生じゃなかろうと思い、50歳で会社を辞めた。必死に手に入れた人生の合格切符(?)を自ら捨てるのだと思うと誠に感慨深いものがあった。本当に人生とはわからない。
つまりは、受験とは一億ほどある人生の試練の一つである。大人はみな知っていることだ。でも不思議にあの頃、そんなふうに言う人は誰もいなかった。なぜだろう。思いやりだったのかな。でも知っておいたほうがいいと私は思う。だから書いてみた。
※AERA 2020年2月3日号
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