

小泉進次郎環境相の育休取得で注目を集めた男性リーダーの育休。急成長をする企業のトップたちはすでに取得している。「権限委譲」と「柔軟性」がカギ。取れば好循環が生まれる。企業のトップたちの育休事情を取材したAERA 2020年2月3日号の記事を紹介する。
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予定外だった育休取得を「自分の働き方を見直すいいきっかけになった」と振り返るのは、画像など素材サイトを展開するピクスタ代表取締役の古俣大介さん(43)だ。
3児の父である古俣さんが育休を取得したのは、2018年の第3子誕生のタイミングだった。上の2人の時は妻の実家の近くに住んでおり、義父母のサポートを受けていた。会社の近くに引っ越して環境が変わったのに加え、“緊急事態”が古俣さんを子育てに引き込んだ。
「出産の1カ月ほど前に、妻が妊娠高血圧症になって入院したんです。突然、僕が“ワンオペ状態”になって、長男(当時8歳)と次男(同6歳)の世話にコミットせざるを得なくなりました。予期せぬことでしたが、結果的に育休の形になりました」
直接やりとりすることが多いコーポレート部門にだけは事情を伝え、業務をリモートワークに切り替えた。会食は延期し、ミールキットを大量に注文して食事づくりを乗り切った。この時期の生活リズムの“強制リセット”がその後も定着し、現在も原則18時には帰宅。子どもを寝かしつけてからリモートで残りの仕事にとりかかるサイクルにすっかり慣れたという。
「家族の関係が安定し、僕自身も健康に。経営判断もよりスピーディーかつクリアになったと思います。むしろ以前の方が無理をしていたのかもと思うくらい(笑)。サステナブルな働き方になってよかったです」
トップ自ら柔軟な働き方を実践することは、人材戦略上もプラスになる。環境変化の激しいベンチャー企業では優秀な人材の確保が重要な課題。
「個々の事情に合わせた自由度の高い働き方を示すことで、採用上の大きな優位性を生みます」(古俣さん)