安浪:新しい入試やICT教育で人を集めようとする学校とは対極で、例えば「書かせる」学校はいいなと思うんです。単に「入力」させる学校とは違う。書くことの習慣化ってすごく大事で、特に中高生、青春真っ盛りの子は、書くことで自分の内面と対話していきます。

矢野:卒業生が私立女子校にいまして、夏休みに来て「作文見てください」って言われたんですが、まあすごい枚数で、こんなに書かせるんだなと驚きました。でもすごくいいことですね。

おおた:書くという作業は言語を思考のツールとして使いこなすための訓練だから、重要ですよね。でもそれですぐに模試の偏差値が上がるわけじゃない。そこに労力をかけて教育の軸を置くのは本気な学校です。

矢野:中学受験をすることで、勉強を好きになってほしいし、面白いなと思える教科が一つでもできたら、それでいい。

安浪:ただ、いまは勉強の量が多すぎますよね。中学がいろんな新手法の問題を出すので、塾はそれを網羅しようと教材の量を増やす。すぐに演習に入ってしまうから、一番学問に興味関心をもつ基礎理解の時間をどの塾もほとんど持てていません。

おおた:お二人のおっしゃるとおりだと思います。でも、実際は多くの親が、いまお二人がおっしゃったことを言葉では理解したつもりだけど本心では理解できてない、っていう状態だと思う。でもちゃんと子どもの努力を近くで見ながら、中学受験期間を過ごしていけば、そのうちわかります。中学受験が終わってから振り返ってああすれば良かったと後悔することもあると思いますけど、それはそれで必ず乗り越えられる。だから大丈夫ですよ、と言いたいですね。

○おおた・としまさ(左):1973年、東京都生まれ。教育ジャーナリスト。リクルート退社後、教育誌の企画・編集に従事。近著に『大学入試改革後の中学受験』

○安浪京子(やすなみ・きょうこ、中央)/1976年、岐阜県生まれ。算数教育家・中学受験専門カウンセラー。著書に『中学受験 最短合格ノート』(朝日新聞出版)など

○矢野耕平(やの・こうへい、右):1973年、東京都生まれ。大手進学塾勤務後、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」代表。共著に『早慶MARCHに入れる中学・高校』

(構成/編集部・高橋有紀)

AERA 2020年1月27日号より抜粋

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