「薬膳とは、体や心の状態に合わせた食べ物を取ることです。体が冷えている人が体を冷やす食べ物を選べば、冷えは一層ひどくなり、熱がこもっている人が体を温める食べ物を選べば、ニキビや口内炎、喉の腫れが起こりやすくなる。旬の食材を生かして、状態に応じて足したり引いたりすればいい。スーパーに並ぶ食材で、十分可能です」(劉さん)

 簡単にできるというなら試したいが、漢方には「陰陽」「五行」「気血水」「虚実」など、専門用語が付きまとう。初心者でも気軽に始められる薬膳の基礎の基礎を、漢方歴25年の薬剤師、久保田佳代さんに聞いた。

「まず押さえておきたいのは、食材には体を冷やすものと温めるものがある、ということです」

 漢方では、食材は、「寒性・涼性・平性・温性・熱性」の「五性」に分類される。

「寒涼のものには体内の熱を取って消炎・鎮静する効果があり、温熱のものには新陳代謝を高める働きがあります。その中間に位置するのが平性です」(久保田さん)

 たとえば、大根、ホウレン草、白菜、青梗菜、トマト、キュウリ、ナスなどは「寒涼」になり、ピーマン、カボチャ、玉ネギ、ネギ、ニラ、生姜、カブなどは「温熱」になる。キャベツや人参、サツマイモは「平」。肉では、鶏肉と羊肉は「温」、牛肉と豚肉は「平」だ。

 調理法や食材の組み合わせでも性質は変わる。寒涼の食材を鍋にして食べれば、体を冷やす作用は弱まるという。普段よく食べる食材の五性を知っておけば、自分で料理する時でも、外食時でも、バランスよく組み合わせることが可能だという。(ライター・羽根田真智)

AERA 2020年1月13日号より抜粋