漢方、薬膳という言葉には惹かれるが、挑戦するのは難しそうでハードルが高い。だが、専門家によると、日常的な食材で誰でも手軽に始められるという。AERA 2020年1月13日号から。
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実家住まいだった頃、都内の食品メーカーに勤務する30代前半の女性の悩みはニキビだった。思春期の頃からことあるごとに発生する。
ところが、1人暮らしを始めてから、ニキビができにくくなった。考えられる要因はひとつ、食生活の変化だ。両親はチーズや肉が好きで、頻繁に食卓に上っていた。だが、1人暮らしになって、買い物では手ごろな価格を優先するように。自然と旬の食材になり、季節に合った食事を取るようになっていた。
しかし、昨春2月ごろ、大きなニキビが口の下まわりに復活した。それまで運動を心がけていたが、その冬は時間が取れなかったことに思い当たった。
「赤くて目立つし、痛い。周囲からも心配されて、本当につらかったです」(女性)
女性は漢方を専門に扱う「薬日本堂」の劉梅(りゅうめい)さんに相談した。漢方とは古代中国で生まれた医学。劉さんはそれを実践する中(ちゅう)医師で、同社の漢方スクールの講師も務めている。「運動不足で代謝が悪くなり、冬の時期に不要なものをため込んだ。それが春になって一気に表に出たことも要因」と分析。中医学に則り、普段の食生活に薬膳を取り入れることをすすめた。
薬膳とは漢方の考え方のひとつで、旬の食材をバランスよく取り入れ、自然治癒力を高めて病を防ぐという食養生のことだ。
解毒作用に優れる菜の花、ハトムギ、緑豆、菊花、ドクダミを積極的に取り、唐辛子やコショウ、山椒(さんしょう)など刺激を与える辛い食材は控えめにする。アドバイスに従うと、1カ月ほどでニキビはだいぶ治まり、2カ月後にはすべて消えた。いまはつるりとしたきれいな肌を保っている。
漢方、薬膳というと「専門知識や特別な食材が必要」という印象を持つ人は多いだろう。だが、劉さんは「薬膳は日常生活の延長線上にある」という。