
フィギュアグランプリシリーズ、ロシア杯で総合4位だった宇野昌磨。フランス杯に続き成績は振るわなかったが、スッキリしている。すでに前を向いている。そこに至るまでの心境の変化を追った、AERA 2019年12月2日号の記事を紹介する。
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フィギュアグランプリ(GP)シリーズロシア杯のフリーから一夜が明け、エキシビション練習の合間。宇野昌磨(21)はスッキリした笑みを浮かべて報道陣の前に姿を現した。
「やっと地に足が着いたというのを感じました」
平昌五輪の銀メダリストとして、ロシア杯の成績は決して満足できるものではなかった。ショートの4位に続き、フリーも4位。総合4位という成績は、自身のGPシリーズにおいて、2週間前のフランス杯の次に悪い成績だ。それでも宇野は笑う。
「気持ちも整理できて、どこまで自分ができるかっていうイメージもできて。あとは練習を積み重ねて、(12月の)全日本選手権に向かうだけかな」
どこまでも前向きな笑顔を見せる宇野。理由を探るには、フランス杯を振り返る必要がある。
この大会、宇野はもがいていた。ショートは2度転倒して4位。フリーでも3度転倒し9位。総合8位で5季連続のGPファイナル進出は早くも絶望的に。キス・アンド・クライでは一人うつむき、涙を浮かべた。
「本当に、どん底だった」
宇野は今季、殻を破ろうとメインコーチを置かずに挑んでいる。10月のジャパンオープンでは涼しい顔で言っていた。
「練習の時間や内容は、今までも自分で考えてきたこと。やっていることは変わらない」
ただ、フランス杯の成績は、自身にとっても予想外だった。
「一人で練習して、一人で試合をする。正直、できると思って今シーズンに入った」
その結果が、8位という惨敗だった。振り返れば、スケートが楽しくなかったという。
「苦しさになっている時期もあったんです。練習するのも、『やらなきゃ試合で良い演技ができないから』って。少しも『(練習を)やりたい』と思える時期がこなかった」
滑ることへのモチベーションさえ揺れる日々。だが、フランス杯が大きな転機になった。涙を流すほどの敗北を味わったからこそ、気づけたことがある。