花粉症治療薬の一部を、健康保険の適用対象外に──。8月に健保連が出した提言に「負担が増える」と不満の声が上がっている。花粉症対策を特集したAERA 2019年11月25日号に掲載された記事を紹介する。
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「病気を持っている人に、ツケを回さないでよ、と思います。怒りしかないですね」
こう話すのは東京都内の会社員の女性(37)。幼い頃から花粉症で、鼻水と目のかゆみに苦しめられ、10歳から8年間、花粉のアレルゲンを体内に入れる「減感作療法」を受けた。症状は少し落ち着き、現在は毎年、かかりつけ医を受診して抗ヒスタミン薬「アレジオン」を処方してもらうだけで済んでいる。
「でも、症状が重くなっていないか確認するためにも、毎年春のかかりつけ医への受診は生命線です。市販薬を買えばいいという問題ではありません」
8月23日、健康保険組合連合会(健保連)が衝撃の提言を発表した。高齢化で急増する医療費抑制のため、医療機関を受診して処方される花粉症薬のうち、同様の効果の市販薬(スイッチOTC医薬品)で代替できる薬は、公的医療保険の適用外とするべきというものだ。
健保連によると、花粉症患者に処方される花粉症治療薬の薬剤費は、年間約2400億円。このうち、OTCが存在する薬を保険対象外にすれば、最大で約600億円もの薬剤費を削減できるという。
花粉症治療薬は飲み薬、点鼻薬、点眼薬など七つに分類される。健保連がまず目指すのは、軽症の場合を想定し、「1処方につきOTCが存在する1分類のみを投薬する場合」を保険適用外にするというもの。年間36億円が削減できるとする。そして次の段階では、OTCが存在する花粉症薬すべてを保険適用外(年間597億円の削減)、あるいは自己負担率を7割へ引き上げ(年間239億円の削減)も目指していく考えだ。
背景には、医療財政への強い危機感がある。健保連理事の幸野庄司さんはこう話す。