つまり、ニュー・アルバム「ミント・エクソシスト」で展開している曲はもちろんすべて新録だが、どこかでこれまでのSPANK HAPPYの作品、活動を別人格がコピーしながら上書きしているかのような側面がある。
実際に、主に2000年代前半に展開していた第2期SPANK HAPPY時代の曲「アンニュイエレクトリーク」のセルフ・カヴァーもあるが、リーマン・ショック以降の資本主義社会の崩壊をこの令和元年に再認識させるかのようにニヒルだ。そして、どうしようもなく自嘲的でもある。
そう、ライヴでは2人して曲に合わせて無表情で踊り、小田もアイドルさながらにハンドマイクで歌う。アルバムには三越伊勢丹のキャンペーン・ソング「夏の天才」のような曲もある。資本主義が従来の資本主義としてもはや成立しなくなっている中で、2人はそれでもポップ・ミュージックが資本主義のゴージャスな徒花的産物であることの美徳を謳う。
実は誰よりも自分自身がそのポップ・アイコンであるという事実に気づいているからこそ、不況なんて言葉ももはや風化してしまうくらい景気回復が見込めない今、SPANK HAPPYはFINALとしての破壊力を放っているのである。(文/岡村詩野)