雅子さまが皇后に即位して以来、笑顔が増えるなど体調の良好さが伝わってくる。精神科医の斎藤環さんに、雅子さまが「適応障害」を発症した背景、これからの皇室像を聞いた。AERA 2019年10月28日号に掲載された記事を紹介する。
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――令和になってしていない仕事に「勤労奉仕団への会釈」がある。皇太子妃時代から「なぜしない」と批判されてきた。
勤労奉仕団は終戦直後から始まったそうですね。これも含め、皇室の「伝統」は後付けの人工的なものがたくさんあると思います。だから、上皇ご夫妻のしていたことを令和のお二人が全て踏襲する必要はない。存在感をアピールする新しいものをつくっていけばいいと思います。
平成の時代、上皇(85)は「祈り」というものに非常にこだわり、宮中祭祀も非常に熱心に行った。最近、昭和天皇と戦争の関わりが史実として新たに解明されてきましたが、上皇はそういったことへの贖罪意識があったのではないでしょうか。
先代の問題を解消することが平成の大きな仕事だったとするなら、令和は次代を意識して天皇家の新しいあり方を設計し直す時代ではないでしょうか。前の時代を見て今を決めるのでなく、次の時代を見て今を決める。
天皇家の存在価値の一つは、サステイナビリティーです。平成の皇室は、天皇と皇后の人権が侵されていると思うほどのハードスケジュールで、私は「ブラック企業」だと言っていました。もっと生活を楽しむ余裕があるような、新しい皇室のあり方を模索するべきだと思います。若い男性皇族が悠仁さま(13)しかいないのが現状です。持続可能性を高めるには、ブラック企業を脱却しなくてはなりません。
皇后の果たす役割も大きいと思います。皇室とは同時代性を体現する存在です。例えば雅子さまが「適応障害」を発症したのは、生き延びるために頑張りすぎてつぶれる「生存のうつ」が減り、「実存のうつ」がどんどん増えた時代でした。