「夫の不貞行為」などがきっかけで不眠や嘔吐、下痢などの症状に悩み、受診した50代女性は「抗うつ剤の副作用である筋弛緩で失禁した際は落ち込みました」という。「通院して5年になりますが、睡眠剤を服薬しないと眠れません。寝ずに3日目に突入すると、さすがにまずいと思い、薬に手を伸ばしてしまいます」と打ち明ける。
約20年間におよぶ夫のうつに悩む60代女性は「薬の副作用のせいか、運動能力が極端に落ちました。笑顔もなくなり、ずっとうつろな表情。家族としてどのように接したらよいか常に苦悶しています」と吐露した。
うつ抜け(回復)には歳月を要するのが通常だ。
親しい人の自死を機に記憶力や集中力が低下し、文章も読めなくなって5年間通院した50代女性は「医師のカウンセリングを受け心の整理ができたが、断薬が想像以上に大変だった」と振り返る。通院をやめて2年半が経過した今も「気持ちが落ち込むことも多く、トンネルから出られない」と明かす。
発症から2年半で職場復帰した40代の男性会社員は全快を実感できない中、再発を防ぐため「小さな楽しみを大切に継続し、自分の気持ちに逆らわない生活」を心掛けているという。
うつの予防や再発を避けるには、さまざまな意見が寄せられた。「失敗や悔やまれることばかりを、いつまでもクヨクヨし続けない。周囲からの視線や雑音を気にしないようにする」「根性論ではなく、体が拒否サインを示したら素直に体の声に耳を傾け、無理をしない」
それぞれに合う無理のない方法で一歩ずつ。そんな地道な向き合い方が不可欠だ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2019年10月14日号
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