SNSに愛らしい姿が連日投稿されるなど、猫が人間のパートナーとして認知されて久しい。一方で、猫の長寿高齢化が進み、がんの罹患率も増えている。早期発見・早期治療で比較的予後がよくなるという。AERA 2019年10月7日号に掲載された記事を紹介する。
* * *
9月、ピンクリボンならぬキャットリボン運動が始動した。猫の乳がんの早期発見、早期治療を啓発するプロジェクトだ。
背景には、猫のがんの増加がある。猫の病気というと、腎臓疾患を思い浮かべる人が多いだろう。だが、米国の動物健康慈善団体Morris Animal Foundation(モーリス・アニマル・ファウンデーション)の調査によると、病気で死んだ猫の死因の1位はがん。約3分の1を占めている。
このプロジェクトの発起人で、日本獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)代表理事を務める小林哲也獣医師(49、日本小動物がんセンター長)はこう状況を分析する。
「生活環境や食餌の向上などにより、猫も長寿高齢化が進みました。結果、がんにかかる猫が増えたのではと考えています」
乳がんは、リンパ腫や肥満細胞腫などとともに猫に多いがんのひとつだ。メスがほとんどだが、ごくまれにオスも罹患する。気を付けたいのは、犬の乳がんとは違い、猫の場合、乳腺にできる腫瘍の約8割が悪性ということだ。放っておけば、腫瘍は大きくなり、転移し、死に至ってしまう。
「猫の乳がんは早期発見、早期治療が重要です。早期に治療すれば、比較的予後がよいことがわかっています」(小林獣医師)
めやすは、腫瘍の大きさが2センチ以内に治療すること。2センチ以内なら根治することも多いが、2センチを超すと、予後が悪くなる。腫瘍が3センチを超すと、多臓器転移率が極端に上がるという。
小林獣医師は年間3千件以上を診療する、動物のがんのエキスパートだ。これまで、「もう少し早く来てくれたら、助けてあげられたのに」というケースを何度も見てきた。