東京五輪のマラソン代表を選ぶ「一発勝負」で、4人が五輪への切符を手にした。激戦を制し、東京五輪への道を切り拓いた選手たちの素顔とは。AERA 2019年9月30日号に掲載された記事を紹介する。
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東京五輪の代表を決める「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が9月15日にあり、男子は2時間11分28秒で優勝した中村匠吾(富士通)と、2時間11分36秒で2位の服部勇馬(トヨタ自動車)が代表に内定した。中村は事前に本命視された「4強」に入っておらず、番狂わせとも言えるだろう。
男子のレースは、4強の一角、設楽悠太(ホンダ)がスタートから“大逃げ”。一時は2位集団に2分ほどの大差をつけたが、もたなかった。最後は中村、服部と、日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)の大混戦となって、中村が制した。
「いろんな方に支えていただいて優勝することができました。東京オリンピックでも頑張りますので応援よろしくお願いいたします」
レース後のインタビューで淡々とした表情で答えた中村。出身は三重県四日市市。同じ三重出身の野口みずきさん(41)が2004年アテネ五輪で金メダルを取ったことに刺激を受けたという。同県の上野工業高校(現伊賀白鳳高)で長距離などで活躍し、駒沢大へ進学した。
高校時代の中村を知る伊賀白鳳高の中武隼一教諭(36)はこう話す。
「速さというより強さが際立つ選手でした。突出してランニングの技術や心肺機能が高いというわけではなくて、自分の力を最後まで振り絞って出せるのが彼の強みです」
2位の服部は、東洋大在学中に箱根駅伝で2年連続区間賞を受賞するなど活躍。弟の弾馬(トーエネック)とともに「服部兄弟」として知られる。社会人になってから伸び悩んだが、昨年の福岡国際マラソンを日本人として14年ぶりに制し、一気に4強の一角に躍り出た。
地元の新潟県十日町市で応援団「援馬隊」を組織する会社員の吉楽一彦さん(64)は、小中学校時代の服部を知る。