これがコピーが変わるきっかけとなった。
「フリーズドライで失敗した際、今後はおいしさを追求しようと決意したのに、同じことを繰り返してしまった。その反省も含め、コピーの順番を入れ替えたのです」(寺澤さん)
こうして94年秋、「うまい、はやい、やすい」に並び替えた。
2000年代に入ると、日本はデフレに。01年に「並盛」の価格を400円から280円に大幅値下げすると、安さを訴求したいと、「うまい、やすい、はやい」と、「やすい」を強調する並びに変えた。以降、現在に至るまで続いている。
広告ジャーナリストの岡田芳郎さんは、こう話す。
「コピーは長く使うことで認知度が上がる一方、インパクトがなくなり飽きられてしまいます。理想は永続性ですが、変化がないと陳腐化してしまう。その点、吉野家は『変えないで変える』というコピーの高等戦術を使っているようだ」
新サイズの導入も、決して何かを大きく変えたわけではない。変えないで変える戦略が、吉野家の未来を動かしている。(編集部・福井しほ)
※AERA 2019年8月5日号