「Free!」は、まだきゃしゃなところもある思春期の少年の肉体、とりわけその鍛えられた筋肉の美しさを入念に描き、ダイナミックなレースシーンではパワーが爆発する。体に絡みつく水、キラキラと飛び散る光の描写も見事。ナイーブな少年同士の「恋」にも似た友情や葛藤のドラマとあわせ、女性ファンを熱狂させている。

 高校の吹奏楽部で少女たちがぶつかり合いながら成長していく「ユーフォ」は、目立つトランペットや繊細な木管など、楽器それぞれの個性とシンクロさせた多彩な少女たちが見ものだ(男子部員もいるが)。キャラクターの造形は、10代の少女らしく肉感的で生命感に満ちているが、男目線のいやらしさがなく清潔で透明感があり、女性ファンにも好まれている。

 髪のほつれや視線の揺れ、わずかなしぐさの変化などに微妙な心理を映すデリケートな作劇から、「音楽する喜び」が爆発する演奏シーンのカタルシスへ。それを支えるのが、音楽と奏者の指の動きを完璧に合わせる作画だ。アニメでは至難のワザを毎週1本のテレビでやってのける人材と技術の厚みは、京アニならではだ。

 両シリーズとも新たな続編の制作が公表され、主要スタッフの意気込みが公式サイトなどに流れていたが、その中にも安否不明とされている人がおり、多くのファンを心配させている。監督、キャラクターデザイナー、アニメーター、美術や撮影のスタッフら、同社が手塩にかけて育ててきた多くの人材が、あの日、むごい炎にのまれた。

 新しい作品が出るたび、私たちファンはあたかも「秘密の花園」に招き入れられたかのようだった。手間と愛情をかけられた花々に、しばし夢を見、癒やされた。花園の多くは無残にも焼け、胸かきむしられる思いだが、いつか再生する日が来ることを、ひたすら祈るしかない。(朝日新聞記者・小原篤)

AERA 2019年8月5日号より抜粋