大学入試センター試験に代わり、2020年度に始まる大学入学共通テストで英語は民間試験を活用することが注目されていた。そんな中、TOEICが参加取り下げを表明した。現職の教員や関係者らが、取り下げの理由について語る。
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「えっ!? TOEICの勉強をしていた生徒は、ゼロから別の勉強をしないといけないのか」
北陸地方の私立高校に勤務する男性英語教員(26)は、驚きを隠せなかった。
2020年度からの入試改革で、大学入試センター試験に代わって大学入学共通テストが始まる。英語は民間試験を活用し、従来の「読む・聞く」に加え「話す・書く」力も測る「4技能」を評価するというのが目玉だった。
その英語の民間試験から、7月2日、「TOEIC」が参加取り下げを表明したのだ。
都立高校に勤務する女性英語教員(43)は、まず安堵した。TOEICはビジネス寄りの試験で、勤務校に受験希望者はいない。が、憤りもこみ上げた。女性は新テストを初めて受験する高校2年生の担任。つい1カ月前、英語の民間試験について学年集会で説明したばかりだった。
民間試験を受験する機会は高3の4月から12月までに2回あるが、既に受験まで1年を切っている。英検の実施概要も発表されたが、第1回検定の予約申し込みは今年9月だ。
「大学入試は英語の民間試験導入によって実質前倒しになりました。2カ月後から、もう手続きがスタートするということです」(女性教員)
共通テストの英語民間試験について、文部科学省は18年3月、TOEICや英検、GTECなど8試験を認定していた。準備が進むなか、今回の「参加取り下げ」が起きた。
ネックとなったのは、TOEICが他試験と違い、4技能を1回の試験で測れない点だ。「聞く・読む」(L&R)、「話す・書く」(S&W)の二つの試験が必要で、実施日も申込日も違う。運営する国際ビジネスコミュニケーション協会の山下雄士常務理事は次のように説明する。