そこで会いに行ったのが、編集者・依田邦代さん(60)。主婦の友社のグレイヘアシリーズをすべて手がけ、「グレイヘアブームの仕掛け人」と言われている。グレイヘアのおしゃれな依田さんだが、40代後半からずっと白髪染めをしていた。『グレイヘアという選択』を作る時に、染めるのをやめ、「白髪年齢は1歳半」。最近増えた講演会などで、そう自己紹介している。

 依田さんは、白髪への深い洞察を語ってくれた。曰く、自分の白髪を見るのは加齢を目の当たりにすること。若いとは生命力、加齢とは死に近づくこと。加齢へのネガティブな感情は、生き物としての本能に近いのではないか。故に実年齢より上に見られれば傷つくし、白髪染めをやめることに二の足を踏む気持ちもよくわかる。だからこそ、白髪をポジティブなイメージにしたいと「グレイヘア」という言葉を作り、染めない自由もあると伝えたかった。

 率直に「グレイヘア=美人の特権と思ってしまう」と依田さんに言った。すると、近藤さんも「きれいだからでしょ」とよく言われるそうですよ、と教えてくれた。そして「エクスキューズ」の話になった。

 最初にパリのマダムで本を作ったら「だって、パリでしょ」という人がいたから、結城アンナさん表紙の2作目で「日本人でも大丈夫」と訴えたつもりだった。すると今度は「美人だからでしょ」という反応で、「染めない」大変さを実感した。変えること、目立つことへの怖さがあるから、さまざまなエクスキューズを思いついてしまうのだろう。そんな話だった。

 だけど、と依田さん。樹木希林さんが白髪を染めていたら、どうだったでしょうか、と。グレイヘアだったから、樹木さんの個性が伝わった。グレイヘアとはつまり、「本来の自分」を出すこと。だから自信を持たないと似合わない。途中から急に似合うようになった人を何人も見てきたが、それは自信を持ったから。顔立ちではなく、キャラ立ちです、と依田さん。

 説得力ありまくり。だからグレイヘアは今、日本を飛び出し、韓国にも伝わろうとしている。

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