地震の影響で瓦が落ちるなどの被害を受けた住宅/6月19日午前8時40分、山形県鶴岡市小岩川地区、朝日新聞社ヘリから (c)朝日新聞社
地震の影響で瓦が落ちるなどの被害を受けた住宅/6月19日午前8時40分、山形県鶴岡市小岩川地区、朝日新聞社ヘリから (c)朝日新聞社
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 新潟と山形を襲った地震の震源地一帯は、過去にも大地震が繰り返し起きてきた“ひずみ”が集中している場所だった。専門家が解説する。

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 6月18日午後10時22分。新潟市の県庁そばにあるマンションに住む会社員女性(41)は、夕食と風呂を済ませて夫と一緒に自宅でくつろいでいた。ほぼ同時にあったというテレビと携帯電話の緊急地震速報に2人で慌てふためいた数秒後、1分ほどの強い横揺れに見舞われた。

 自宅付近は震度4を観測したが、マンションが古かったためか、それ以上の揺れに感じた。本棚から本や写真立てが落ち、洗面台の棚にあった整髪料なども床にばらまかれた。エレベーターも止まった。

「外に出ると、居酒屋のお客さんたちが店の外に出て不安そうに身を寄せ合っていました」

 間もなく、慌ただしげに県庁に戻ってくる職員たちの姿が目に入ってきた。

 6月18日夜に新潟や山形を襲ったマグニチュード(M)6.7の地震。新潟県村上市で震度6強を観測したほか、山形県鶴岡市で震度6弱、秋田県由利本荘市や山形県酒田市、新潟県長岡市、柏崎市などで震度5弱を観測した。震源は山形県沖で、これまでに知られている活断層とは一致せず、未知の断層だったとみられている。

 総務省消防庁によると、21日午前7時までに山形、新潟などの5県で32人が重軽傷を負い、住宅では山形県鶴岡市で97棟、新潟県村上市で46棟、秋田県でも2棟の一部破損が確認された。地盤が緩んでいる地域もあり、土砂災害の危険性は続く。

 未知の断層が原因とは言え、今回の震源地を含む一帯ではこれまでも、大きな地震が繰り返し起きてきた。

 京都大学防災研究所の西村卓也准教授(測地学)によると、震源を含む一帯は「日本海東縁ひずみ集中帯」と呼ばれる。

 日本海東縁ひずみ集中帯は、北海道沖から新潟県佐渡島沖にかけての東西100キロほどの帯で、東日本の「北米プレート」と西日本の「ユーラシアプレート」の境界付近に位置している。この場所にひずみが集中していることについて、西村准教授は「学説としては比較的新しく、40年くらい前から提唱されている」と話す。

 柏崎刈羽原発の火災も起こした新潟県中越沖地震(M6.8)や104人の死者を出した1983年の日本海中部地震(M7.7)、津波が発生して26人が死亡した64年の新潟地震(M7.5)、1833年の庄内沖地震(M7.7)も、このひずみ集中帯で起きている。

東北大学の遠田晋次教授(地震地質学)は、ひずみについてこう解説する。

「地質学的に言えば、地殻が東西方向に押されて短くなってしまう現象です。非常に長い時間スケールで、過去の地震などを原因に、地殻が何百メートルも何キロも縮んでいることを確認しています」

この日本海東縁ひずみ集中帯の南側にある「新潟─神戸ひずみ集中帯」も大きな地震に警戒が必要だ。
 
 地震の発生源として最も警戒されている南海トラフの場合、30年以内にM8~9の巨大地震が起きる確率が70~80%とされている。最悪のケースを想定した場合、死者約32万人、負傷者約63万人、経済的損失は約220兆円にのぼるとも見込まれる。(編集部・小田健司)

AERA 2019年7月1日号より抜粋