競争主義はバレエコンクールの隆盛に顕著だ。「時代を代表する日本発のバレリーナ」の多くは、世界的なコンクールでの受賞をきっかけに、海外の著名団へと飛躍した。それにあやかって、国内では現在、大小のコンクールが続々と立ち上げられ、芸術性以上に競技性が過熱している。

 IT革命以降は、世界の誰もがバレエ情報に簡単にアクセスできるようにもなった。その状況をチャンスととらえ、所属先のバレエ団を超えて行動を起こすダンサーも登場している。

 今夏、新世代の日本人ダンサーが集結する「オーチャード・バレエ・ガラ~JAPANESE DANCERS~」に出演する飯島望未(27)は08年に16歳で米国のヒューストン・バレエとプロ契約し、今年3月、プリンシパルに昇格した。舞台では古典だけでなくコンテンポラリーなど新ジャンルにも積極的に取り組み、シャネルのビューティーアンバサダーを務めるなどファッショニスタとしても活動する。彼女のSNSは冒険的なモード写真が満載だ。

「それはひとえに劇場に足を運んでいただきたいから。日本でバレエという言葉は浸透しましたが、舞台を観る方はまだ少数。また、日本国内ではバレリーナが職業として本当には確立されていません。そこを開拓したい気持ちも大きいのです」(飯島)

 4.0の時代はバレエ本来の芸術性を、いかに大衆の関心に結び付けていくかが課題。ダンサーたちは踊りだけでなく、セルフプロデュースやSNSでのコミュニケーションなど、時代に即した総合的な能力も試されるようになっている。

 今回の記事は層の厚い女性に焦点を当てたが、近年は二山治雄(22)、隅谷健人(24)ら、次世代を担う日本人男性ダンサーの台頭も目覚ましい。小山教授らの調査によれば、それでも日本の男性バレエ学習者は全体の2%強だが、この先、5.0時代が来るとしたら、今度は彼らが主役だ。(文中一部敬称略)

(ジャーナリスト・清野由美)

AERA 2019年6月10日号

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼