選択できる状況にあるとき、ぼくたちは自由を感じます。そして、選択するためには選択肢が必要です。選択肢はいま見えているものだけではありません。すでにあるのにも関わらず気づいていない選択肢もありますし、まだ存在しない選択肢もあるはずです。それらを見つけ出し、あるいはつくりだすこと。そして、そのなかから、自分の意志で選択するための知識と技術こそが、リベラルアーツです。
選択するためには、その選択をするとどうなるのかを想像できるかどうかが鍵になります。もちろん、想像できないほうを選択することもできますが、そのためには「想像できない」というメタ認知が必要です。
もう一つ、忘れないで欲しいのが、そもそも、想像できたところでその通りになるとは限らないという前提です。いかなる場合でも、誰にとっても、未来に保証なんてない。つまり、「想像は想像でしかない」というメタ認知も必要だということです。だったら、闇雲に不安がって可能性を楽しまないのは損です。
未来は想像を大きく超えるかもしれない。まだ見ぬ夢や想像もしていない未来が待っているかもしれない。分かっていることは、いまあなたが想像した将来とは確実に違うということです。だから、想像も変わっていい。ゆれながらも想像し続ける経験が、ぼくたちを強くしてくれます。
まだ<ない>ことは、ときにすでに<ある>ことよりも価値があります。そして何より、まだ<ない>未来が訪れることに、理由も意味もあるはずなのです。
矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、実践教育ジャーナリスト、多摩大学大学院客員教授。大手予備校などで中学受験の講師として20年勤めた後、2014年「探究×受験」を実践する統合型学習塾「知窓学舎」を創設。実際に中学・高校や大学院で行っている「リベラルアーツ」の授業をベースにした『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)を3月20日に発売
(構成 教育エディター 江口祐子/生活・文化編集部)