(撮影/松永卓也)
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 2019年度の入試で起きた異変で話題になったことがある。国内文系学部でこれまで最難関とされてきた東大の文科I類(文I)を、文科II類(文II)が合格者最低点、最高点、平均点の全てで上回ったというニュースだ。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんは、「採点基準が異なるため単純比較はできない」としながら、「昔のように『何が何でも文I』ではなくなってきている」と話す。

 石原さんは文Iの人気低下の要因の一つに、(文Iからの進学が多い)法学部→法曹、官僚というルートよりも、(文IIからの進学が多い)経済学部→グローバル企業で活躍という道に魅力を感じる学生が増えたことを挙げる。東大進学者が多い国立高校から今年文IIに入学した学生(18)は言う。

「やりたいことが決まってないので、経済学部の選択肢が一番広いと思って文IIにしました。周囲で外資コンサルに行きたいとか起業したいとか夢がはっきりしている学生は迷わず文IIを選んでいます」

 教育ジャーナリストの後藤健夫さんは、今回の逆転を「文Iを頂点とした文系の偏差値ピラミッドへの信奉がいよいよ崩れてきたことの表れ」と見る。

 東大法学部人気の低下……。大学勢力図に今年起きた異変は、実学志向が学生と企業、社会全体に浸透しつつあることを示している。(編集部・石臥薫子)

AERA 2019年5月13日号より抜粋