「学力試験は大変ですが、生徒のためには結果的によかった。系属校として、優秀な生徒を大学に送り出す責任もあります。7割以上の生徒に系属校推薦の条件をクリアできる学力をつけて送り出してあげたい」(同)

 大学側には早い時期から入学者を確保できるというメリットがあるが、中学受験の月刊専門誌「進学レーダー」編集長の井上修さん(51)は、「それだけではない」と言う。

「連携先の生徒を総合型選抜(AO入試)で採りたいと考えているようです」

 AO入試は、大学のアドミッションポリシーに合う生徒を採りやすい。中学高校時代の活動歴や小論文、面接など複数の選考を行い、受験生を総合的に判断することになるからだ。年々定員が厳格化するなか、AO入試は、歩留まりの読みづらい一般入試よりも入学者数を把握しやすいというメリットもある。

「大学の方針を理解し、目的を持って入学すれば、授業にもまじめに取り組むでしょう。いくつかの大学では、AO入試で入学した生徒は成績が伸びることもわかっています」(井上さん)

 今後、高大連携は中高一貫校を中心にさらに加速することが予想される。いっぽうで、大学進学について情報格差が広がる可能性もある。

「特に、中高一貫の私立校と公立高校で差は広がりそうです。公立高校で大学について調べ出すのがおおむね高2くらいから。提携先のある中高一貫校では中学1年次から大学の情報が入るので、将来像を描きやすい」(同)

 生徒たちの大学選びの志向は、大学名ではなく、自分の学びたい学部で選ぶ方向にシフトしている。中学からその大学の進学コースに入っても、在学中に志望が変わることもある。「ゆるやかな教育提携が主流になるのでは」と井上さんは言う。

 情報に多く触れたほうが、納得のいく道は選びやすい。早ければ、中学選びから大学選びを意識する時代になりそうだ。(ライター・柿崎明子)

AERA 2019年5月13日号