安倍晋三首相が夏の参議院選挙と同時に、衆議院の解散総選挙を行う「衆参ダブル選挙」に打って出るのではないかという見方が強まっている。一体なぜなのか。
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「最後に何かありますか?」
4月24日の自民党総務会。手をあげたのは村上誠一郎・元行政改革担当相だった。
「財政が大変ななか2度も増税を延期したのに、軽々に再延期を口にするのはいかがなものか」
安倍晋三首相の最側近の一人、萩生田光一・自民党幹事長代行の発言のことだ。4月18日にインターネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に出演した萩生田氏は「景気が非常に回復傾向にあったが、ここへきて日銀短観を含めて、ちょっと落ちている」「崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかない」などと発言し、増税延期もあり得るとの見方を示した。
また、「(消費増税を)やめるとなれば、国民の了解を得ないといけない」などとも述べ、衆院解散にも言及している。
村上氏の発言に、中野正志参院議員が声を上げた。
「(萩生田)幹事長代行の考えは、党の幹部として当然のことです。非難するにあたらない」
一方、声を出して村上氏の意見に同意する者はいなかった。
「私が口火を切らないと誰も何も言わず、議論にもならない。増税に向けた軽減税率やポイント還元の対応はすでに始まっており、今さら中止となれば国民も怒るだろう。OECD(経済協力開発機構)にも財政再建のためには将来的に20~26%への消費税引き上げが必要と指摘されたばかりだ」
村上氏は本誌の取材に語気を強め、続けた。
「財政も金融も外交も行き詰まり、国と地方の借金は1300兆円。膨れ続ける社会保障も次の世代にツケを回して運営している。目先の選挙対策のためだけの増税撤回など許されない」
首相の最側近と歩調を合わせるかのように、4月22日には菅義偉官房長官が衆参ダブル選の可能性を問われ、「首相がやるといえばやる」と発言。夏の参議院選挙に向け、永田町が一気に騒がしくなっている。