明治以降の文人に限っても、たとえば土井晩翠(ずいぶん日本的な作品を書いた人だと扱われている)なども、漢学の素養がないと全く理解できないですよね。森鴎外、夏目漱石あたりは当然ですし、現代でも、「元号に関する有識者懇談会」に加わっておられた林真理子さんの小説などもそう。漢字の文字遣いにかなり気を配っておられ、本当に理解するには相当な漢学の素養が必要です。

 それにしても、日本国内にも「中国の影響を排除した」と中国共産党メディアのような反応を示す向きがあるのは、いかがなもんでしょうかね。元号というものを「安っぽいナショナリズム」の材料にしてはならないんじゃないのか、と思うわけです。

 万葉の時代、日本は巨大な中国経済圏のほんの一部に過ぎません。象とアリという表現がぴったりで、踏まれたら一巻の終わりです。余談ですが日本は当時から精巧、緻密なものづくりが得意で、ふかひれ、アワビ、ナマコ、シイタケ(どんこ、と言いますが、これは中国語のトンクーがなまったものです)など、中華料理における食材の「4番バッター」は当時も日本からの輸入でした。東北の震災の時に大変困ったのは中国で、極上のアワビが手に入らなくなり、高級店が閉鎖されるなんて事件もありました。

 あれ、話がおかしなほうへ行ってしまう……ということで、ともあれ、新元号のお話でした(笑)。

AERA 2019年4月15日号

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