我が祖父母の世代までは、お金の管理といえば現金をチェックしていればよかった。それが今では全てが急激に複雑になりました。自分のお金がどこにどれだけあってどのお金をどこに払っているかを把握しきれない高齢者がどれほどいるかと思うと他人事とは思えません。そして、初回無料サービスなど「行きはヨイヨイ帰りは怖い」式の商品がいかに多いことか。自己責任の名の下、意識せぬ間に毎月お金を吸い取られている高齢者の数は相当なボリュームになるんじゃないか。もしや高齢者の物忘れが日本の景気を牽引してるんじゃないかと思うと、ああモヤモヤする。

 高齢化社会のお金の使い方について、改めて考えた方が良いと思うのです。年をとれば認知症にもなるし、ならなくとも物忘れは増える。それは恥ずかしいことでもなんでもない。そんな自分の身の丈にあった暮らしをすればいいじゃないか! 必要最低限のもので単純に小さく暮らす。それが真の節約、いや真の贅沢と考えることもできる。

週刊朝日  2019年4月1日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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