齊藤さんが再生を依頼したのは、神奈川県鎌倉市の不動産会社「エンジョイワークス」。クラウドファンディングによる空き家再生は昨年始めた。
同県葉山の空き蔵を1日1組限定の「泊まれる蔵」にしたり、同県逗子の廃工場をクリエイターがシェアできるアトリエとして再活用したりと、4件の空き家再生事業をクラウドファンディングで実現させた。費用は100万円から1200万円まで幅広いが、「葉山の空き蔵」は目標額600万円がわずか1日で集まった。同社社長の福田和則さんは事業の特徴をこう語る。
「地域の人と一緒に、空き家をどう収益化するかを考える『参加型』を目指しています。地域で何回もイベントを開いて、該当の空き家プロジェクトに興味がある人の意見を多く募る。その中でリーダーの方針に賛同し、参加したいと思った人が投資をする流れを作っています。目指すのは、地域のボトムアップによる空き家再生です」
投資は1口5万円から。投資したのは、その空き家が自分の故郷だった人、旅行でその土地に愛着を持った人、建築に興味がある人などさまざま。もちろん、物件が収益化すればリターンもあるが、福田さんによると、高い利回りを期待して投資する人はほぼいないという。
「『逗子のアトリエ』は告知期間を短くし、8%と高い利回りを設定することで、どこまで資金が集まるか実験してみましたが、目標額達成に約1カ月かかった。利回りよりも、私たちの事業内容への共感が投資を促していることがわかりました。集まる空き家のうち、事業の見通しが立つのは半分くらい。その中で、資金調達まで進めるのはかなり絞られます。それでも、継続性のある空き家再生事業を積み重ねていくことが、空き家問題解決の第一歩となると考えています」(福田さん)
(編集部・作田裕史)
※AERA 2019年4月1号より抜粋