安倍晋三首相との面談で県民投票の結果を通知し、SACOの枠組みに沖縄を加えた新しい協議機関の設置を提案した玉城デニー沖縄県知事(左)=1日、首相官邸 (c)朝日新聞社
安倍晋三首相との面談で県民投票の結果を通知し、SACOの枠組みに沖縄を加えた新しい協議機関の設置を提案した玉城デニー沖縄県知事(左)=1日、首相官邸 (c)朝日新聞社
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玉城知事が提案した「SACWO」の枠組み(AERA 2019年3月18日号より)
玉城知事が提案した「SACWO」の枠組み(AERA 2019年3月18日号より)

 沖縄県の玉城デニー知事が安倍晋三首相との面談で提案した新しい協議機関。日米の専門家から、提案を評価し実現を後押しする声が相次いでいる。

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「SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意から23年が経過し、合意の進捗を確認するとともに、基地返還の検証を行うため、SACOに沖縄県を加えた『SACO With Okinawa(SACWO)』という新しい話し合いの場をぜひ設けてほしい」

 3月1日、首相官邸。玉城デニー知事は安倍晋三首相をまっすぐに見据え、基地返還のための新たな協議機関の設置を要請した。さらにこう加えた。

「その実現のためには、総理と私でとことん腹を割って話し合う場面をより多く作って、解決策を探っていくほかない」

 辺野古新基地(沖縄県名護市)建設に伴う埋め立ての是非を問う沖縄県民投票は「反対」が7割超を占めた。その結果を伝える席で玉城知事が投じたのが、「対話による解決」に向けた具体的な提案だ。だが政権は「腹を割る」どころか、県民投票の結果を一顧だにせず「辺野古」の工事を進めている。

 玉城知事は2月27日の本誌単独インタビューでこんな思いを吐露している。

「本当の意味で私が沖縄県知事として県民投票の結果の重さに責任を持つのは、そこ(SACWO)で現実的に議論を進めることだと思っています」

 玉城知事の政策意図をくみ取り、SACWO提案を評価する日米の専門家もいる。

「日本本土と沖縄をつなぐブリッジになる、この提案を無視すれば沖縄は漂流しかねません」

 こう話すのは、琉球大学・早稲田大学名誉教授で沖縄県と日米の交渉経緯に詳しい江上能義氏だ。

「玉城知事が言うように23年が経過し、国内外の政治、軍事状況も大きく変化する中、SACO合意がどうなったのか、沖縄県民も国民もよくわからなくなっている。検証は重要です」

 SACOは、日米両政府が1995年9月の米海兵隊員らによる少女暴行事件や、当時の大田昌秀・沖縄県知事の駐留軍用地特措法に基づく署名・押印の拒否を受け、同年、沖縄の米軍基地の負担軽減を目的に設置された。96年12月の最終報告で、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を含む11施設、5002ヘクタールの返還などを盛り込んだ。同報告は普天間飛行場の代替施設について「沖縄本島東海岸沖」に建設することも明記した。

 江上氏はSACOの問題点についてこう指摘する。

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