「女性のほうが家事・育児の負担が重く、その分、睡眠時間にしわ寄せがきているということでしょう」(小林さん)
埼玉県に住む通信系企業勤務の女性(50)もそんな一人。残業を終えて帰宅するのは夜9時過ぎで、家事をこなしてベッドに入るのは午前1時近くだ。翌朝5時半には中3の娘の弁当作りが待っている。
「満員電車で立ったまま寝ていることも多々あります。物忘れも激しく、あまりに心配で物忘れ外来を受診したほど」(女性)
残業削減に偏ったうわべだけの「働き方改革」も問題だ。
「以前は多少残業してでも集中してキリがいいところまで終わらせ、帰宅後はリラックスできていたのに、いまは途中で切り上げて帰らなくてはならない」
と話すのはソフトウェア会社に勤める男性(49)。帰宅して食事や入浴をすると、仕事モードに戻るのに時間がかかり、終わって寝ようとすると今度は頭が冴えて寝付けない。結果的に4時間半しか眠れず、昼休みは「食欲より睡眠」。ランチ抜きで自席で突っ伏す毎日だ。
「残業削減で逆に生産性が落ちました。心も折れやすくなって、頑張りがきかない」(男性)
いずれも切実な悩みで、根本的には睡眠時間を確保できることがベストだが、そうはいかない場合、「できるだけ質の良い眠りをとることが重要。それにはテクニックが必要です」と小林さん。今回、そのアドバイスをお悩み別にまとめた(画像参照)。「仮眠直前にコーヒーを飲む」や「寝かしつけ後に起きるなら3時間後」など働く世代の参考になる。
質の良い眠りには寝具も重要だ。テンピュール・シーリー・ジャパンの吉永寛子・マーケティング本部長によれば「多すぎる寝返りは深い睡眠の妨げになる」。一晩の平均は20~30回だが、計測できるアプリなどでチェックし、場合によってはマットレスを見直すなどの対策も必要だろう。
一方、社会的時差ボケならぬホンモノの時差ボケに悩むビジネスパーソン向けには、現在、全日本空輸(ANA)が「時差ボケ調整アプリ」をニューロスペースと共同開発中だ。アプリではユーザーがフライト情報や現地での予定を入力する。すると、時差ボケを調整するための光の浴び方や睡眠、食事、カフェインやアルコール摂取のタイミングを渡航前から帰国後まで教えてくれるという。リリースの目標は20年3月末だ。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2019年3月4日号より抜粋