睡眠のリズムが狂い体内時計が混乱をきたす「社会的時差ボケ」が問題視されているが、一口に睡眠と言っても千差万別の課題がある。睡眠の質を高めるにはどうすればいいのか。
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社会的時差ボケになるのは、平日の睡眠不足や眠りの質の低下が原因だが、睡眠の課題は業種や働き方によってもさまざまだ。企業向けに睡眠改善のコンサルティングを行うニューロスペースに、企業ごとに課題を調査分析したデータの一部を見せてもらった(グラフ参照)。
例えばほぼ同じ回答者数でも体を動かす機会が多い運送事業者とオフィスワーク中心の商社では、商社のほうが慢性睡眠不足や起床困難、熟睡困難を抱えている割合が高い。同じオフィスワーク系でも人材サービス業は、商社より状況は深刻だった。
「職種では営業や店舗に出ている人はいいのですが、事務系やITのエンジニアなどは日中パソコンの前に座りっぱなし。そうした仕事の環境が睡眠の質の低下につながっています」
ニューロスペースの小林孝徳社長はそう指摘する。
仕事でパソコン作業が多い人が眠りにくい要因は主に二つ。一つは「深部体温」だ。これは脳や内臓など体内の温度で体内の活動を維持するために昼間高くなり、夜は休ませるために低くなる。
眠くなるのは、深部体温がぐっと下がるタイミングだが、日中体を動かしていないと体温の上昇が不十分になる。その分下がるカーブも緩くなるため、寝つきが悪くなってしまうのだ。もう一つ、快眠を阻むのは「光」。パソコンやスマホ、LED電球の光を夜まで浴びることで体内時計が狂ってしまう。
眠りに関する悩みでは、男女でも差がある。ニューロスペースが都内で働く男女500人超を対象に実施した18年度「『企業の睡眠負債』実態調査」によると、自身の睡眠に不満を感じている割合は、すべての年代で女性のほうが男性より高かった。実際の睡眠時間の分布を見ても、男性が6時間に集中しているのに対し、女性は分散しており、5時間のところにも一つのピークがある(グラフ参照)。