彼ら韓国版ネトウヨの間で近年話題となっているワードが、「従北(親北)」だ。ソウル在住のメディア関係者はこう説明する。

「従北とは、北朝鮮に盲目的に従属する、つまり『アカ(共産主義者)』という意味。彼らは軍政時代の朴正熙大統領など伝統的な愛国保守主義を支持しているので、例えば、その娘である朴槿恵前大統領を弾劾するろうそくデモを仕掛けたのは従北者だと主張しています。全く関係ない相手に対しても、『あいつらは北朝鮮支持だ。従北だ』と感情的になるのです」

 現在の韓国は、海を隔てた隣国・日本よりも、政権が敵対から雪解けへとかじを切った地続きの同胞・北朝鮮のことで頭がいっぱいだ。

 かつて李明博大統領が在任中に竹島(独島)に上陸し、低迷していた支持率の上昇を狙ったことがあった。けれども政権も国民も対北関係に意識が集中している今の韓国では、日本を政治的に利用して得られる効果も、外交の優先順位もかつてとは比べものにならないほど低い。

 だから、メディアもかつてのような「日本バッシング」では数字を稼げない。一部とは言え、メディアが韓国たたきを売り物にし、「嫌韓本」が売れる日本とは、対照的な状況だ。

 前出の徐氏は、日韓のお互いの政治が機能していない今、両国の関係はしばらく停滞が続くとみている。そして、日韓関係は今後、北朝鮮という国家に翻弄され得ると予測する。

「唯一、日本と韓国の利害が一致するのが日朝間の国交正常化。けれども6者協議が破綻している今、日本がどんなビジョンを持ってこれを行うのかが見えてこない。そして北朝鮮との国交正常化が実現する過程で、日本は最低でも200億ドルと言われる植民地賠償金支払いの交渉に臨むことになる。この厳しい交渉に日本国民が耐えられるか、そして韓国がどんな立場を取るのか。すんなりとはいかないだろう」

(編集部・中原一歩)

AERA 2019年3月4日号より抜粋

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