
フィギュアスケート男子の宇野昌磨が、万全の調子ではないなか四大陸選手権を制した。ショート4位の出遅れから、渾身のフリーで逆転。最大の収穫は「勝利への意欲」だ。
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米アナハイムのホンダセンターが何度も揺れた。フィギュアスケートの四大陸選手権は、男女ともにフリーでショートの順位が大幅に入れ替わる大激戦。フリーは1人滑るたびに、大きなため息とスタンディングオベーションが繰り返された。
男子は大会前から激戦が予想されていた。例年スロースターターの中国の金博洋(ジンボーヤン)(21)は、昨年12月の国内大会で4回転を計5本決め、300点超え。米国のヴィンセント・ゾウ(18)は1月の全米選手権のフリーで4回転3本を決めて2位。
しかし調子を上げてくるライバルたちとは裏腹に、宇野昌磨(21)は12月の全日本選手権で痛めた右足首の捻挫が再発し、苦しんでいた。
「全日本選手権のあと10日ほど休養したが、練習したい気持ちが先走って4回転サルコウを練習し、疲れがたまっている翌日にバキッとやってしまいました。足が熱くなって立ち上がれなくなっていました」
その後また休養を挟んで練習を再開。今度はジャンプで転倒し、自分で右足を踏んで痛めた。
「歩くと痛くて、ジャンプはこらえられない。まずは我慢して、米国入りしてからゆっくり調整しよう」
もちろん、痛みがあることは外部には明かしていなかった。
「不安はありました。でも焦ったり、落ち込んだり、機嫌が悪くなったりしてもプラスにはならない。前向きに明るく過ごそうとしました」
そんな宇野の心の支えになったのは出水慎一トレーナーだった。五輪シーズンから帯同し、宇野の体の状態をピタリと言い当てる。昨年12月にもこんなことがあった。
「昌磨は関節がもともと柔らかいし、今まではアップもクールダウンもしなかった。でも21歳になると疲れもたまりやすく体が変わるから、来季はウォーミングアップを取り入れるよ」