――2007年から東大の工学部都市工学科の教授になられた。

 農学部ではなく工学部から、私がやっていることは面白いっていうんで、「環境デザイン」という講座を新たにつくって呼んでいただきました。私のような者を呼んでくださった先生方に今でも感謝しています。最初は、私の代だけのつもりだったようです。いや、この分野は重要だから都市工学科の永久講座にしないといけないと思って、私は懸命に努力しました。設計競技(コンペ)では、内外で第1位を取り、毎年のように立派な賞をいただきました。岐阜県各務原市の「水と緑の回廊計画」には日本都市計画学会計画設計賞(2007年度)と土木学会デザイン賞最優秀賞(2008年)、同じく優秀賞(2010、2012年)をいただき、2008年には内閣府から私の仕事全体に対して「みどりの学術賞」を授与された。おかげで、永久講座になりました。ですから私は環境デザイン講座の創設者です。

 論文を集大成した本は、2001年に岩波書店から出しました。これは、日本都市計画学会論文賞をいただきました。

石川幹子さん=2023年3月、中央大学の隣にある文京区立礫川公園
石川幹子さん=2023年3月、中央大学の隣にある文京区立礫川公園

――まちづくりや景観設計の実践活動も多いですね。

 神奈川県の鎌倉市や川崎市など自治体の環境審議会や都市計画審議会の委員を数多く務めてきました。鎌倉では開発業者と闘い、川崎では緑地のカルテというのを作ってコツコツ小さな緑を守ってきました。20年ぐらい奉仕しました。横浜は10年ぐらいかな。一番長いのが東京都新宿区で、将軍家の鷹狩りの場だった「おとめ山公園」の再生は、地元の皆さんとの協働で武蔵野の自然を再生したコモンズです。新宿区という大都会で、蛍が群舞しています。

 ただ「緑を守りましょう」と言っても全然ダメ。きちんと調査して、計画にしないと守れません。それはサイエンスなんです。なぜ、賞をいただけるのか、長い間わかりませんでしたが、私の場合はサイエンスの土台があるからだということに、最近、思い至りました。

 私の設計は、科学的な調査をがっちりやって、それに基づいてデザインするんですけど、デザインは設計者が勝手に描かないで、集まった市民の意見を聞いてみんなで考える。「私が決めない」のが私の原則です。設計者は、縁の下の力持ちに徹することが大事です。

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あの場所を子どもに返して