東京港の防潮扉で見つかったネズミの落書きが、“巨匠”バンクシーの作品にそっくりなことから「贈り物」に。東京近郊には、世界の有名アーティストによる消してはいけない「お宝」が、まだまだある。
【写真特集】東京近郊にある世界の有名アーティストによる消してはいけない「お宝」
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「東京への贈り物かも?」
小池百合子都知事がツイッターにそんな投稿をしたのは1月17日のこと。現場にわざわざ足を運び、“贈り物”と記念撮影までしてしまう、はしゃぎっぷりだった。
知事が期待を寄せる贈り主は、イギリス出身のアーティスト、バンクシー。港区の防潮扉に何年も前からネズミの落書きがあることがわかり、それがバンクシーの作品そっくりだったことから、大騒ぎになった。
こんなふうに街の公共物や壁にスプレーなどで描かれたアートは、グラフィティと呼ばれる。日本語に訳すと、単なる「落書き」になってしまうのだが、1980年代頃からキース・ヘリングやバスキアなどの巨匠級の作家が登場し、落書きなんかじゃなくて、「アート」としても注目されるようになった。
で、このグラフィティ界の今現在の大スターが、バンクシーだ。ユーモアとメッセージ性のある作品で知られ、昨年はロンドンのオークションで1億5千万円で落札された作品が、直後、作家本人が額に仕込んだらしいシュレッダーでズタズタになった事件でも、その名が知れ渡った。
この1月末には、パリのコンサートホール「ルバタクラン」の非常口の扉に描かれたバンクシー作とされる絵が、扉ごと盗まれるという事件も。2015年のテロで多くの犠牲者が出たホールで、盗まれたのはテロ後、バンクシーが追悼の意味で描いたとされる、悲しげな少女をモチーフにした作品だった。
そんな“22世紀の美術の教科書入り、間違いなし”の巨匠が描いた「かもしれない」ネズミ。都は防潮扉の一部を早々に回収し、「真贋鑑定をしていく方向で、検討している」(文化振興部)という。
まあ、どんな巨匠が描いても違法な落書きであることに間違いないわけで。この特別扱いには当然批判の声も多いのだが、ここからが本題。日本には、バンクシー以外にも、有名アーティストが来日して描いたお宝級のグラフィティがけっこうあって、いつ消されるかもわからない運命に直面している。