

タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【俳優のエマ・ワトソンはHeForShe運動についてスピーチした】
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最近、Toxic Masculinity(有害な男らしさ)という言葉をよく聞くようになりました。腕力や能力の優位性を誇示して、女性を性的で従属的な存在とみなすようなタフでマッチョな態度が「男らしくて」カッコいい。弱音を吐いたりくよくよ悩むのはダメ男、という思い込みです。
Boys will be boys.という言葉がありますが、少年の粗暴な行動を大目に見ることが子どもたちにいじめや暴力、性差別に肯定的なメッセージを与え、将来のDV加害者を育ててしまうと指摘されています。
DVが深刻な問題となっているオーストラリアでも、子どものうちから「男は強く女は弱い」とか、「男子はやんちゃなくらいがいい」という育て方をやめましょう、と教育省が啓発しています。
アメリカではこのほど、P&G傘下のひげ剃りブランドGillette(ジレット)のメッセージ広告を巡って大議論になり、不買運動まで起きています。内容は「最善の男になるための努力をしているんだろうか?」と男性たちに問いかけるもの。ひげ剃って女にモテようぜ!という従来のマッチョな広告から一転して、有害な男らしさを捨て、暴力や性差別をする男たちを諫め、子どもたちにいじめをやめさせ、従来の男らしさを見直そうという強いメッセージを打ち出しています。これに対して一部では、男を加害者と決めつけ貶めるものだと反発が噴出。
続いてSchickも「これまで露骨な猥談などをする場所だったロッカールームトークを見直そう」と動画を配信。著名なアスリートを起用し、ロッカールームを模したスタジオでメンタルな悩みや不安を吐露し合っています。男がシェアするべきは、弱みをオープンにし、男らしさの呪いから自由になる場所だという意図を感じますね。これにも不買運動する人たちは、ひげ剃りを買うのも一苦労ですね。
性差別・性暴力撤廃のために男性も立ち上がろうというHeForShe運動を広げるためにも、まずは男性が男性にかかった呪いを解いて男性観を見直すことが大事です。取り組みを心から応援します。
※AERA 2019年2月4日号