一方で視線耐性を高める人もいる。57歳の自営業女性は、他者の視線は一切気にならないと言い切る。40代までは、
「やっぱり、『いい大人が何してるんだ』っていう意識があったし、周りにもそう見られるだろうなと思っていました」
転機は「自分の人生を精いっぱい生きてきた」と言えるようになったこと。
「たくさんお金を稼いだとか、すごいことを成し遂げたってことではないけれど、この年まで生きてきたこと自体に胸を張れるようになりました。親の介護をしたり、しんどいこともあるけれど、ちゃんと生きてきた自信が芽生えました」
後悔や後ろめたさを感じないから、他者の視線は気にならない。3年ほど前にはヒップホップダンスを習い始めた。「やりたいことをやろう」と思ったときに浮かんだ。昨年初めてステージにも立った。
夫は写真を撮りまくり、仲の良い飲み友達も見に来てくれた。
「自分にとって大切な人の視線が、人生を豊かにしてくれる」
自信が生まれたからこそ、そう感じられるのだろう。
経験が少ない、自分に自信がない──そういったことを背景に視線耐性が低くなってしまうようだ。そうなると他者の視線や反応を過剰に気にして、自らの行動や人生の可能性すらも狭めてしまう。
※AERA 2019年2月4日号