人の視線を過剰に意識してしまったり、そのせいで思ったように行動ができなかったり……そんなことに心当たりがある人は、もしかしたら「視線耐性」が低いのかもしれない。この視線耐性、若い人が低い傾向にあるという。
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年齢を重ねるにつれ、視線耐性の低下を実感する人もいる。デザイン職として働く43歳の女性は「人と接することに苦手意識はありません」と言いつつも、30代半ばを過ぎたころから、食事の際には照明が暗めで隠れ家的な店ばかり好むようになった。
「『見られたくない』という意識がだんだん働くようになってきたんだと思います」
明るい店だと、入って早々に化粧直しをしなければならない。くたくたに疲れているときにそんなことはしたくない。店内が暗ければ、仕事終わりの疲れた顔でも何とかなる。
「たとえひとりでも、そんな意識が働きます。暗いお店は他者に見られているという不安感が少なく、ストレスを感じません」
店内が明るいと、自然と若い女性のハリのある肌に目がいく。ちょっと「いいな」と思う男性に対しても、自信を持って話すことができず、自分でいいのかと後ろめたさを感じてしまう。
「やっぱり、若いころと今とのギャップなんだと思います。私だって昔は肌はピンピンだったし、体力もあった。でもだんだんとそうではなくなってきて、『見られる』ことがイヤになってきたのかな」
数年前から、夏場以外はマスクをするのが当たり前になった。
「自分のなかでは花粉や防寒対策だと言い聞かせて、『見られたくない』という意識にフタをしています。夏もマスクを当たり前に着けられる理由がほしいですね」
マスクは、他者の視線を気にしなくてすむ最強の「防具」であり、必需品なのだとか。
「もはや自分にとって、マスクは『顔パンツ』です。つけていない姿を世間にさらすのは恥ずかしい」
この女性は、人と目を合わせるのが苦手なわけではないと思っている。それでも行動が制約されるのは、自分に自信がないことが原因で、視線に限定されない他者の反応全般を過剰に気にするからだ。