■ひざの急な痛みは半月板の損傷も
膝関節は大腿骨と脛骨、膝蓋骨からなる関節だ。骨の表面には軟骨が貼り付いていて、大腿骨と脛骨の間にはクッション性のある軟骨様の半月板がある。それらの軟骨が関節をスムーズに動かす潤滑作用を担っている。
軟骨の主成分はコラーゲンだ。そのため、加齢で肌が衰えるように、軟骨も加齢の影響を受ける。加齢とともに軟骨が変性し、すり減った軟骨のかけらが、膝関節全体を覆う関節包の内側にある滑膜にちらばる。それがひざを刺激して炎症を起こし、水がたまったり、腫れや痛み、運動障害が生じたりする。それが変形性膝関節症だ。その進み具合はX線検査で確認できる。
「軟骨がすり減ると、X線写真でも大腿骨と脛骨の隙間が狭くなっていることが確認できます。進行すると、軟骨が消失してほとんど隙間がなくなる。骨と骨が直接ぶつかり合い、変形や強い痛みが生じます」(平中医師)
変形性膝関節症を発症する前に、半月板の損傷によってひざの内側が痛むケースもある。50~70代女性の急なひざの痛みで多いのが「半月板後根断裂」だ。階段で踏み出すなどしたときに半月板が根元で切れてひざに強い痛みが出るという。東京都済生会中央病院整形外科副医長の勝山詠理医師は、半月板を大腿骨という頭をのせる“枕”に例えて説明する。
「脛骨という板間に関節軟骨という布団を敷いて毎日寝ていると、布団はいつしか、せんべい布団になり、半月板という枕もへたってきます。特に体重が重かったり、いつも同じ場所に頭を置いて寝ていたりすれば、その部分の傷みが早くなる。半月板損傷は枕の端が切れて中綿が飛び出た状態です」
■運動不足で急なランニングは危険
半月板が傷みはじめてからは5~10年という長い年月をかけて変形性膝関節症に進行していく。肥満や、過去に靱帯損傷や骨折等の外傷の経験があると、それも発症の原因になりやすいという。
一方で、若年者の場合には、ひざの使いすぎによる腱炎によってひざが痛む場合がある。