約2年前に娯楽用大麻を解禁した米マサチューセッツ州は、2018年11月に商業販売も合法化した。大麻愛好家には待望の初売買となった(写真:Gettyimages)
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どこから見ても普通のチョコレートブラウニーだが、大麻食品だ。食用だと深い多幸感が得られるという。添えられているのは大麻草の葉(写真:Gettyimages)
北米大陸での大麻の法的位置づけ(AERA 2019年1月14日号

 カナダで娯楽目的の使用が解禁され、ニューヨーク州でも合法化が検討されている大麻。関連商品の市場も拡大しつつある現在、議論され続ける合法化と、その危険性に迫った。

【写真】ブラウニーそっくりの大麻食品がこちら

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 どこから見ても普通のブラウニーにしか見えない。1袋77グラム入りで20ドル(約2250円)。ただ、値段は通常よりも約2割高い。宣伝文句を読むと、その理由が分かった。

「一口食べたら究極の高揚感。月までひとっ飛びで行けちゃう気分になる。大麻が持つ癒やしのパワーが込められている」

 米ワシントン州シアトルを拠点に、大麻関連商品を扱う会社がネット販売するブラウニーだ。大麻に含まれ、「多幸感を生み出す」といった作用があるテトラヒドロカンナビノール(THC)が使われている。商品カタログには、乾燥大麻や吸引道具に加え、キャンディーやチョコレート、飲料や化粧品などの大麻関連商品が紹介されていた。

 実際に高揚感を得られるのだろうか。複数の米国人の友人の感想をまとめると、こうなる。

「抽出されたTHCが混ざっていて、乾燥大麻を吸うよりも、ゆっくりとハイになる。しかも深い高揚感が長く続く。ただ、味も香りもブラウニーそのものなので、子どもが食べないように注意しないといけない」

 連邦法で大麻を禁止薬物に指定する米国で、ワシントン州は2012年、コロラド州とともに、成人による大麻の娯楽目的の使用を合法化する州法を成立させた。大麻に含まれる特定の成分が、がんやアルツハイマーなどの治療に役立つとして医療目的で合法化した州はあったが、娯楽使用は、ワシントン州で12年12月に米国で初めて解禁された。年齢や販売法などの規定に違いはあるが、州法による娯楽用大麻の合法化は、この6年でオレゴンやカリフォルニアなどに広がり、18年もバーモントとミシガンで認められた。

 現時点で10州が娯楽用大麻の使用を認め、首都ワシントンがあるコロンビア特別区でも合法だ。ニューヨーク州も知事が19年内の合法化を目指している。医療用大麻は33州で合法化され、さらに14州でTHCなどの量を制限する厳格な規制下での部分的な活用が認められている。連邦法同様に完全違法なのは3州だけ。国際的には30カ国が医療目的での大麻を合法としている。娯楽用大麻を国として認めているのはウルグアイだけだったが、18年6月、カナダが2国目となる法律を成立させ、世界を驚かせた。

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